Column / 障害福祉の業務改善
障害福祉の支援記録にかかる時間の測り方
作成・確認・書き直しを分ける計測シート
支援を終えて記録を書き、別の職員に確認してもらい、足りないところを書き直す。ひと続きの仕事なので、「記録に何分かかったか」を聞かれても、どこまで含めるか迷うことがあります。記録の時間を減らしたいと思っても、どこに時間がかかっているのかが見えないままでは、何を変えればよいか決めにくいですよね。まず整えたいのは、職員が急いで書く方法より、同じ区切りで仕事を見られる状態です。
この記事は、障害福祉サービスと障害児通所支援の管理者・記録担当者向けの実務提案です。厚生労働省は、障害福祉の生産性向上を、支援者の力をチームで利用者へ届ける取組として整理しています。以下の測定区分とシートはYORIAIが提案するもので、行政の指定様式ではありません。
Quick answer
書類1種類を選び、作成・確認・書き直しを別々に測ります。
AIを使う前と使った後で、同じ様式・同じ完成条件の記録を比べます。時間だけでなく、記録漏れ、事実の修正、確認担当者の負担も残すと、下書きが速くなった分だけ確認が増えていないかを確かめられます。
最初の対象は、完成の条件がそろう書類です
候補には、日々の支援記録、連絡帳、会議記録などがあります。管理者と実際に書く職員で、繰り返し発生するか、今の様式が決まっているか、確認する人を置けるかを見ます。「一番大変そう」だけで選ぶと、月に一度しかない書類や例外の多い仕事を選び、比較が難しくなることがあります。
同じ支援記録でも、就労継続支援と放課後等デイサービスでは、残す内容や共有先が異なります。サービス種別を混ぜず、最初は一つの様式に絞ります。内容の型を整理したい場合は、支援記録の書き方と記入例、放デイの業務全体を見たい場合は書類業務を効率化する手順が入口になります。
「観察した事実があり、必要項目を満たし、担当者が確認して正式保存できる」を完成条件として、事業所の運用に合わせて具体化します。個別支援計画の合意や説明など、人が担う手続きを、文章が完成したことだけで済んだ扱いにはしません。
「何分かかったか」は、区切り方で答えが変わります
記録担当者は、作業の開始と終了をメモします。途中で支援や電話に戻った時間は分け、記録を開いたままの経過時間を、そのまま作業時間にしない方法です。秒単位の正確さを競う必要はありません。全員が同じ単位と区切りで測り、測れなかった分を推測で埋めないことを優先します。
| 工程 | 含める作業 |
|---|---|
| 作成 | メモの整理、入力、AIへの指示、下書きを整える作業 |
| 確認 | 元の事実、必要項目、表現、記録の整合を照らす作業 |
| 書き直し | 確認後の修正と、その修正を再確認する作業 |
| 中断・待ち | 別業務への対応、回答待ち、AIの応答待ちなど。実作業と分ける |
確認を別の職員が行う場合は、その人の時間も加えます。同時に二人で確認したなら、時計上の経過時間と、人が使った時間は異なります。シートでは人ごとの実作業分を集計し、同じ時間を作成と確認へ二重に入れないよう、担当の区切りも決めます。
計測シートには、利用者の本文を入れません
記録時間の計測シート(CSV)には、測定用ID、サービス種別、様式、測定区分、各工程の分数、完了・未完了、漏れや事実修正の有無を残せます。CSVは手入力用の空欄シートです。合計欄も手入力なので、自動で比べたい場合は使い方・記入例・自動集計付きのExcel版を使えます。Excel版は200件分の入力欄があり、未計測や未完了をゼロに混ぜず、導入前後の中央値・品質の件数・負担感を集計します。CSVの架空記入例も用意しました。氏名など実在の情報は含みません。
利用者名、生年月日、診断名、支援内容の本文は入力しません。測定用IDは計測のためだけの番号にし、元の記録との対応表が必要な場合も、事業所の権限を限った場所で別に管理します。自由記述欄にも、利用者が分かる事情を書かず、「必要項目の確認に時間がかかった」など工程の情報を残します。
このシートは、AIへ渡すための記録ではありません。実際の情報をAIに入力する可否は、利用規約、事業所のルール、個人情報の取扱いを別に確認します。準備段階は架空データで試し、AI導入前の安全確認項目と照合します。
導入前と導入後は、同じ条件で比べます
測定する期間、対象の様式、通常の記録と例外対応の分け方を、開始前に決めます。書きやすい記録だけを選ばず、決めた期間に対象となった記録を残します。未完了や計測漏れは消さず、比較に使えた件数と使えなかった理由を併記します。
集計では、完了した1件ごとに作成・確認・書き直しを足し、その合計時間の中央値を見ます。中央値は小さい順に並べた中央の値で、件数が偶数なら中央の二つの平均です。工程別の中央値を足しても、1件ごとの合計の中央値とは一致しないことがあります。
例えば、作成が8分から4分、確認が2分から5分、書き直しが1分から2分なら、合計はどちらも11分です。これは計算のための架空例で、導入実績ではありません。下書きの時間だけを見れば短縮に見えても、仕事全体では変わっていないことが分かります。
AIの使い方を覚える時間や、様式を整える初期作業は、日々の記録時間と分けて残します。測定期間中に様式や担当体制が変わった場合も記録し、AIだけの効果だと断定しません。件数が少ない段階では、その範囲で見えた傾向として扱います。
短くなった時間と、残せた内容を一緒に見ます
管理者と確認担当者は、記録漏れ、事実と違う記述、書き直しが必要だった記録の件数を、対象件数と一緒に確認します。AIの誤りを正式保存前に止められた場合も、なかったことにはしません。確認の仕事が機能した事実と、下書きに修正が必要だった事実を両方残します。
速い職員を基準に順位を付けると、相談や丁寧な確認がしづらくなるおそれがあります。比較するのは人の優劣ではなく、様式や情報の置き場所、確認手順を変えた前後です。職員の負担感も同じ聞き方で確かめ、時間が短くなっていても確認を省いていないかを見ます。
必要な内容が欠ける、根拠へ戻れない、確認が追いつかない場合は、対象を広げず、入力の型や担当を見直します。記録の保存・整合は運営指導に向けた記録整理、計画書の下書きと人の確認の分担は個別支援計画書のAI活用手順で整理しています。
測定のあとに、変える箇所を一つ決めます
作成に時間がかかるならメモの型、確認に時間がかかるなら元の事実への戻り方、書き直しが多いなら必要項目の共有を見直す、というように結果を次の小さな変更へつなげます。AIを増やすことが、いつも次の一手になるとは限りません。
まず一つの様式で、誰がどこまで測り、誰が何を確認するかをそろえるところから始められます。生まれた時間を休息や支援の見直しにどう使うかも、現場で話せる形に残します。最新の制度や指定上の取扱いは、厚生労働省の公表資料と所管の窓口で確認します。
書類1種類の選び方から、計測・下書き・確認手順を一緒に整理する支援もあります。
AI業務効率化支援の内容を見てみるよくある質問
- 何件測れば効果を判断できますか?
- 一律の件数だけでは判断できません。測定期間と対象条件を先に決め、対象件数、完了件数、計測漏れを示します。件数が少ない結果は傾向として扱い、時間だけでなく記録の質と負担も確認します。
- AIの応答待ちは作成時間に含めますか?
- 実際に手を動かす時間と、応答を待つ時間を分けて残します。待っている間に別業務を行った場合、その時間を両方の作業時間に重ねて数えないようにします。
- 職員ごとの速さを比べるために使えますか?
- このシートは個人の順位付けを目的としていません。担当する記録や支援の条件が違うため、様式、情報の置き場所、確認手順を見直すために使います。
- 計測シートに支援記録の本文を貼り付けますか?
- 貼り付けません。利用者名や支援内容を入れず、測定用IDと工程の時間、品質確認の結果を残します。元の記録との対応が必要な場合は、事業所の権限を限った場所で別に管理します。
参照した一次情報
- 厚生労働省「障害福祉現場における生産性向上の基本的な考え方―当事者視点に立ったケアの充実のために」(令和8年3月)
- 厚生労働省「障害福祉分野における生産性向上・手続負担軽減」(2026年9月23日確認)
測定区分とCSVはYORIAIによる実務上の提案で、法定様式や効果の保証ではありません。サービス種別ごとの記録要件と所管の最新資料を確認し、正式記録の判断は担当者が行います。