Column / AI業務効率化
個別支援計画書のAI活用手順|下書きプロンプトと人が確認する項目
計画の内容を考える作業と、文章にする作業を分ける
面談のメモ、日々の記録、前回の計画を並べて開きながら、本人の言葉をどの欄に残すか考える。材料はそろっているのに、本人が望んでいることと、職員が必要だと考えたことを分けて書こうとすると、手が止まることがありますよね。その迷いは、本人の意向を大切に扱おうとするからこそ生まれるものです。分けて書くには、材料ごとの確認が要ります。
個別支援計画書にAIを使う場合は、先に人が確かめた材料を整理し、文章の下書きを試すところから始められます。支援の方向性や本人の意向を、AIがもっともらしく補う使い方は避けます。
この記事は、就労継続支援A型・B型、生活介護、放課後等デイサービスなどで、下書きの運用を検討する担当者向けです。説明用の架空例で入力と確認の手順を示すもので、どのサービスにもそのまま提出できる計画書様式や、個別の支援判断を提供するものではありません。
最初に、AIを使う範囲と使わない範囲を決める
下書きで試せる作業として、人が選んだ記録の分類、決定済みの支援内容の文章化、読み手に合わせた表現の整理があります。生成した文は、そのまま採用せず元の材料へ戻って確認します。
一方、本人の意向の確認、アセスメントの判断、支援方針の決定、計画の説明や必要な同意・交付の手続は、文章生成とは別の工程です。担当する管理責任者などが、サービス種別に応じた手順を確認します。
放課後等デイサービスでは、こども家庭庁のガイドラインに本人支援の5領域の視点が示されています。ただし、その枠を成人向けサービスへそのまま当てはめる記事ではありません。サービスごとの現行資料と事業所の様式に戻ることを前提にします。放課後等デイサービスガイドライン等
1.入力前に、材料と確認済みの判断を分ける
試作を始めるときは、実在する人に由来しない架空メモと空の様式を使います。名前を消した実際のアセスメントを、試作データの代わりにはしません。
材料は、次の区分に分けておく方法があります。
- 本人の意向:本人から確認した言葉。未確認なら「未確認」と残します。
- 家族などの意向:誰から聞いた内容かを、本人の意向と混同せず記録します。
- 観察した事実:どの場面で何があったか。推測や評価を別にします。
- 人が検討した支援案:まだ候補なのか、どの段階まで確認しているのかを明記します。
- 未確認事項:目標、期間、担当者、本人への確認など、空いている項目を残します。
実際の情報を扱う段階では、入力の目的、使うサービスの契約やデータの扱い、事業所内の承認を先に確かめます。個人情報保護委員会の注意喚起を出発点にし、単に学習利用をオフにしたことだけで入力可能とは判断しません。生成AIサービスの利用に関する注意喚起
事業所で整理する項目は、福祉AI導入のリスクチェックリストにもまとめています。情報の組み合わせで本人が分かる場合があるため、仮名への置き換えだけを安全の根拠にしません。
2.架空メモで、文章化だけを試す
次は、生活介護の計画書作成を考えるための架空例です。実在の利用者、職員、事業所の記録ではなく、実際の支援に適用する推奨例でもありません。
- 本人の意向:「活動を自分で選びたい」。
- 観察メモ:写真カードを並べると、その中からひとつを指さした。
- 職員が検討中の支援案:活動の前に写真カードを提示し、選んだカードを確認する。
- 未確認:本人が望む提示方法、目標の期間、担当者、評価の方法。
- 家族などの意向:この架空メモには記載なし。
AIへ渡す指示文は、次のように範囲を限定できます。
以下は説明用の架空メモです。個別支援計画書を確定するのではなく、検討用の文章の下書きに整理してください。「本人の意向」「観察した事実」「職員が検討中の支援案」「未確認事項」に分け、各文の根拠となるメモを併記してください。本人の意向、支援目標、達成期間、担当者、診断、達成度を新しく作らないでください。材料のない項目は「未確認」または「記載なし」とし、支援案を決定事項に書き換えないでください。
ここで求める出力は、計画書の完成版ではありません。材料のある箇所と、人が決める必要のある箇所が分かれる下書きです。
次は、その文章の書き方を示す見本です。特定のAIサービスを試した実測出力ではありません。
本人は、活動を自分で選びたいと話している。写真カードを並べた場面では、その中からひとつを指さした。職員は、活動前に写真カードを提示し、選んだカードを確認する方法を検討している。本人が望む提示方法、目標の期間、担当者、評価の方法は未確認である。
「毎回、自分で活動を選べるようになる」と目標を足したり、「3か月後に達成する」と期限を埋めたりしていない点が、この見本の確認ポイントです。文章が整っていても、空欄を埋めた根拠がなければ、計画の採用判断には使いません。
3.各文を根拠へ戻し、本人の意向と支援案を確かめる
作成担当者は、下書きを一文ずつ元のメモと照合します。「文章として自然か」と「内容に根拠があるか」は分けて確認します。
- 本人の意向が、職員や家族の希望へ置き換わっていないか。
- 本人の発言と、観察した行動、職員の解釈が区別されているか。
- 検討中の支援案が、合意済み・実施済みの表現になっていないか。
- 入力していない目標、回数、期間、担当者が補われていないか。
- 行動の理由や本人の気持ちを、AIが推測していないか。
- 必要な確認事項が、読みやすくするために消えていないか。
- 別の人の記録や、前の計画の内容が混ざっていないか。
- 確認した担当者と、採用・修正した理由を残せるか。
たとえば「写真カードで安心して選べた」という文が出た場合、観察メモに「安心していた」という確認はありません。「写真カードの中からひとつを指さした」という事実へ戻すか、本人への確認が必要な事項として扱います。
根拠を指せない文が続く場合は、指示文を長くする前に、入力する材料や対象の欄を狭くする方法があります。確認できないまま文章を整え続けるより、いったん下書きを採用しない判断を残します。
4.確認した内容を、事業所の計画作成手順へ戻す
AIで文章化したことを理由に、計画作成の通常の手順を省きません。担当する管理責任者などが、サービス種別と現行の運用に応じて、本人等への確認、関係者との検討、説明、必要な同意や交付の手続を進めます。
元の記録、検討用の下書き、確認した最終版を区別し、どの版を正式な計画として保存したのか分かる状態にします。修正があった場合は、変更した内容と確認者を記録します。
下書きの作成時間だけでなく、根拠照合や修正にかかった時間、採用できなかった理由も残すと、運用を続けるかの判断材料になります。架空データの試作結果を、実際の支援品質や業務時間の改善実績として扱うことはできません。
記録ソフトと内製化は、組み合わせて考えられる
既存の記録ソフトを使っている事業所で、すべてを別の道具へ移す必要はありません。現在の保存・確認の運用を保ちながら、一部の文章化だけを試す選択肢もあります。外部支援を利用する場合も、支援方針や最終的な確認を誰が担うのかを明確にします。
ここでいう内製化は、職員が入力する材料、指示文、確認の手順を理解し、見直せる状態を目指すことです。制度や様式が変わったときに、自動的に正しい対応ができるという意味ではありません。参照した資料の版や確認日を残し、必要に応じて指定権者や専門家に確認します。
よくある質問
AIに長期目標・短期目標を考えてもらえますか
この記事の試作では、新しい目標の生成は対象にしていません。本人の意向やアセスメントに基づき、人が検討した内容の表現を整理する範囲に限定しています。もっともらしい目標が出ても、その人に合う根拠がなければ採用しません。
5領域に分ければ、個別支援計画として使えますか
項目に分けることと、必要な支援を検討することは同じではありません。対象サービスの資料や様式を確かめ、本人の意向やアセスメントから計画を検討します。放課後等デイサービスの枠組みを、すべての障害福祉サービスへ一律に適用しません。
名前を伏せれば、実際のアセスメントを入力できますか
名前を伏せたことだけでは判断できません。情報の組み合わせ、入力の必要性、サービスの契約やデータの扱い、事業所の承認を確かめます。条件を確認できるまでは、この記事の架空例で試す範囲にとどめられます。
未確認の欄を、そのまま残せる型から始める
最初は、空の様式に「確認済みの事実」「人が検討した内容」「未確認事項」を分けてみるだけでも構いません。AIを使った後も、本人に確かめることと、職員が判断することが見える下書きであるかを確認します。
日々のメモを整える手順は、放課後等デイサービスの支援記録・連絡帳の記事にも例を載せています。事業所の運用に合わせて検討したい場合は、AI業務効率化支援の案内を参照できます。
下書きの運用について相談してみる場合も、最初の連絡に実際のアセスメントを送る必要はありません。空の様式と、どの欄で作業が止まるかの説明から始められます。