Column / AI内製化
個別支援計画書を、AIで作成する方法
ソフトに頼らず“内製化”する進め方
個別支援計画書の作成は、放課後等デイサービスや児童発達支援の現場で、とても重い仕事のひとつです。 アセスメントを読み込み、本人と保護者の願いをくみ取り、五領域に沿って目標を立て、決まった様式に落とし込む。 一人ひとりに向き合うほど時間がかかり、それでいて、子どもと過ごす時間とは別のところで体力を奪われていきます。 「この書類づくりを、AIで楽にできないか」——そう考える方が増えているのは、とても自然なことです。
結論から言えば、AIで下書きを作ることは十分にできます。 ただ、その第一歩は「自動で作ってくれるソフトを探すこと」ではないと、私たちは考えています。 本当に効くのは、現場のスタッフ自身がAIを使えるようになること——つまり内製化です。 この記事では、ソフト・外注・内製化の違いから、実際にAIで個別支援計画書を下書きする手順、そして気をつけたい使い方までを、順番に整理します。
「作ってくれるソフト」より、「自分で作れる力」
個別支援計画書をAIで作るためのソフトは、すでにいくつもあります。決まった枠に情報を入れると、計画案が出てくる。便利な仕組みです。 ただ、ソフトには「その枠の中でしか動けない」という性質があります。 報酬改定で様式が変わったとき、新しい加算ができたとき、自分たちの事業所ならではの言い回しに直したいとき—— そのたびに、ソフトの対応を待つか、別の手を探すことになります。
内製化は、向きが逆です。スタッフ自身がAIを道具として使えるようになるので、様式や制度が変わっても、自分たちで作り直せる力が手元に残ります。 月額のソフトに縛られ続けるのではなく、いずれ自分たちだけで回せる状態を目指す。 これは私たちが大切にしている「人を変えない、環境を変える」という考え方とも、まっすぐつながっています。 道具を渡して終わりにせず、最後は手を離していく。依存させないことを、はじめから設計に入れておくのです。
AIで個別支援計画書を下書きする、4つのステップ
内製化といっても、特別な技術は要りません。よく使う指示文(プロンプト)と、情報を整理する型さえあれば、決まった手順をなぞるだけで下書きが出せます。流れは大きく四つです。
- 事実をそろえる。アセスメント結果や日々の記録から、その子の様子・得意・困りごと・保護者の願いを、箇条書きで手元にまとめます。ここはAIではなく、人の観察がもとになります。
- AIに下書きを頼む。そろえた事実だけをAIに渡し、「この情報をもとに、五領域に沿った長期・短期目標と支援内容の案を出してください」と頼みます。事実を作らせず、整える役に徹してもらうのがコツです。
- 人が確かめて整える。出てきた案を一文ずつ記録と照らし、事実と合っているか、本人の願いとずれていないかを確認します。専門職としての判断を、ここで必ず入れます。
- 言葉を相手に合わせる。保護者に渡す文面は、やさしい言葉に書き直す。行政に出す部分は、制度の用語に整える。AIは、同じ内容を読み手に合わせて言い換える下書き役として、ここでも役立ちます。
この四つのうち、AIが受け持つのは2と4の「下書き」だけです。 事実をそろえるのも、内容を保証するのも、人。 AIに事実を作らせず、人が事実を保証する——この分担さえ守れば、計画書づくりはぐっと軽くなります。
外注・SaaS・内製化 ── 3つの道の違い
個別支援計画書のAI化には、大きく三つの道があります。どれが良い悪いではなく、事業所の状況で選ぶものです。
- 外注:作成そのものを外に出す。手間はかからない一方、費用がかさみ、ノウハウは現場に残りません。
- SaaS(月額ソフト):決まった枠で出力できる。導入は手軽ですが、枠の外には出にくく、月額が続きます。
- 内製化:現場がAIを使えるようになる。立ち上がりに伴走は要りますが、様式変更にも自分たちで対応でき、最後は自走できます。
私たちが力を入れているのは、三つめの内製化です。 これは新しいソフトを作って売る話ではなく、福祉現場のAI内製化プログラムとして、 スキル・指示文・ファイルの整え方の三点を、事業所に合わせて一緒に組み上げていく伴走です。 ゴールは、新しい書類が増えても、職員が自分で対応できる状態。そこに届いたら、私たちは手を離します。
やってはいけない使い方 ── 個人情報とハルシネーション
便利さの裏で、押さえておくべき注意点が二つあります。どちらも、知っていれば防げるものです。
ひとつは個人情報。氏名や生年月日など、個人を特定できる情報は、そのままAIに入力しないのが基本です。 イニシャルや仮名に置き換える、入力データが学習に使われない設定のサービスを選ぶ、事業所内で扱いのルールを決めておく。 この三つを守るだけで、安全度は大きく上がります。
もうひとつはハルシネーション——AIが事実と違うことを、もっともらしく書いてしまう現象です。 対策は単純で、AIにはアセスメントや記録にある事実だけを渡し、出てきた文章を記録と一文ずつ照らして確認すること。 AIの文章を「完成品」ではなく「たたき台」として扱う癖をつければ、誤りはほぼ取り除けます。
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AIで書類がどこまで軽くなるか、現場の手ごたえとして確かめていただけます。内製化の伴走は、その実演からはじまります。
個別支援計画書づくりの重さは、子どもと向き合う本来の時間を削っています。 AIは、その重さをならすのに、今いちばん手の届きやすい道具です。 ソフトに頼り続けるのでも、外に丸ごと出すのでもなく、自分たちで使いこなせる力を現場に残す。 それが、変わり続ける制度の中でいちばん長く効く、書類との付き合い方だと、私たちは考えています。
よくある質問
- 個別支援計画書をAIで作っても問題ないのですか?
- AIはあくまで下書きを助ける道具です。最終的な内容の判断と責任は、児童発達支援管理責任者をはじめとする専門職が担います。アセスメントの読み取り、本人や保護者の願いの反映、最終確認を人が行う前提であれば、下書きをAIに任せること自体は問題になりません。大切なのは、丸写しにせず、必ず人が確かめて整える運用にすることです。
- 「作ってくれるソフト」を買うのと、何が違うのですか?
- ソフトは決まった枠の中で計画書を出力します。内製化は、現場のスタッフ自身がAIを使いこなせるようになることを指します。様式が変わっても、加算が新設されても、自分たちで対応できる力が残ります。月額に縛られ続けるのではなく、いずれ自走できるようになるのが内製化のねらいです。
- 個人情報をAIに入力しても大丈夫ですか?
- 氏名や生年月日などの個人を特定できる情報は、そのまま入力しないのが基本です。イニシャルや仮名に置き換え、入力したデータが学習に使われない設定のサービスを選ぶ、事業所内のルールを決めておく、といった配慮が必要です。リスクを正しく押さえれば、安全に使えます。
- AIが事実と違うことを書くのが心配です。
- AIは事実と異なる文章をもっともらしく書くことがあります(ハルシネーション)。対策は、AIにはアセスメントや記録にある事実だけを渡し、書かれた内容を一文ずつ記録と照らして確認することです。AIに事実を作らせず、人が事実を保証する。この分担を守れば、心配は大きく減ります。
- ITが苦手な職員でも内製化できますか?
- はい。難しい設定や専門知識は前提にしていません。よく使う指示文(プロンプト)と、情報を整理する型を用意しておけば、決まった手順をなぞるだけで下書きが出せます。最初は伴走しながら、少しずつ自分たちだけで回せる状態へ手を離していきます。