Column / 福祉事業所の運営
就労継続支援B型の平均工賃月額の計算方法
3つの数字の出し方と、令和8年6月からの区分の基準
年度が替わると、前年度の平均工賃月額を出して、基本報酬の区分を確かめる時期が来ます。計算式そのものは一行なのに、延べ利用者数をどの表から数えるのか、臨時で開けた日を開所日に入れるのかで、手が止まることがありますよね。
この記事は、就労継続支援B型事業所の管理者と、工賃・請求の事務を担当する職員の方に向けて、平均工賃月額の計算に使う3つの数字を、どの記録から出して、どう残しておくかを整理したものです。厚生労働省の令和6年度・令和8年度の報酬改定資料をもとにしています。
Quick answer
平均工賃月額は「年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12」で出します。
- 令和6年度の報酬改定で、各月の工賃支払対象者数で割る方式から、開所日1日あたりの平均利用者数で割る方式に変わりました。
- 使う数字は、前年度の工賃支払総額、延べ利用者数、年間開所日数の3つです。
- 令和8年6月から、基本報酬区分の基準額が3千円引き上げられ、中間の区分が新設されました。1万円の境目は据え置きです。
- 3つの数字それぞれに、元の記録へ戻れる控えを残しておくと、次の年度も同じ手順で出せます。
計算式が変わった理由を知ると、数字の意味が見えてきます
令和6年度より前は、各月に工賃を支払った人数を1年分足し合わせ、工賃の総額をその人数で割っていました。月の途中で利用を始めた人や入院した人などを、計算から除外する決まりもありました。
厚生労働省の改定資料は、見直しの理由を、障害特性などにより利用日数が少ない方を多く受け入れる場合があることを踏まえたもの、と説明しています。週に1日しか通えない人も、以前の方式では工賃を支払った月ごとに1人として数えるため、その人を受け入れるほど平均が下がりやすい仕組みでした。新しい式は、開所日1日あたりに平均で何人が利用したかで割るので、通う日数が少ない人を受け入れていることが、平均を押し下げにくくなっています。あわせて、従来の除外要件は廃止されました。
令和8年2月の報酬改定検討チームの資料では、この算定方式の見直しで平均工賃月額が約6千円上昇したとされています。令和8年6月に区分の基準が見直されたのは、この上昇に対応するためです。改定の全体像は、厚生労働省の令和8年度障害福祉サービス等報酬改定のページにまとまっています。
3つの数字は、それぞれ別の記録から出します
| 計算に使う数字 | 出す元の記録 | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 前年度の工賃支払総額 | 工賃台帳、振込や現金支給の記録 | どの月の支払までを前年度分とするか。指定権者の案内で確かめ、毎年同じ基準で出す |
| 前年度の延べ利用者数 | サービス提供実績記録票、利用実績の月別集計 | 開所日ごとの利用者数を足し上げた数であること。請求した実績と一致していること |
| 前年度の年間開所日数 | 運営規程の営業日、開所日の一覧 | 臨時休所や振替の開所を反映した、実際に開所した日数であること |
3つの数字は、工賃は経理、延べ利用者数は請求、開所日は管理者というように、担当が分かれていることがあります。計算の前に、それぞれをどの記録から出したかを1枚に並べておくと、同じ年度を同じ区切りで出しているかを後から確かめられます。
延べ利用者数は、サービス提供実績記録票の実績と揃えておくと、運営指導などで説明を求められたときに元の記録へ戻れます。記録票の揃え方は、サービス提供実績記録票・支援記録・請求を揃える方法で整理しています。
架空の数字で、一度計算してみます
ここからは計算の流れを見るための架空の例です。実在する事業所の数字ではありません。
| 項目 | 架空の数字 |
|---|---|
| 前年度の工賃支払総額 | 2,970,000円 |
| 前年度の延べ利用者数 | 3,600人 |
| 前年度の年間開所日数 | 240日 |
| 開所日1日あたりの平均利用者数 | 3,600 ÷ 240 = 15人 |
| 平均工賃月額 | 2,970,000 ÷ 15 ÷ 12 = 16,500円 |
端数の扱いや、利用者の障害基礎年金の受給状況に関する扱いなど、細かな取扱いは留意事項通知と指定権者の案内で確かめます。
令和8年6月から、区分の基準が3千円上がりました
令和8年度の報酬改定(臨時応急的な見直し)で、平均工賃月額に応じた基本報酬区分の基準額が、令和8年6月から3千円引き上げられました。引き上げ幅は、算定方式の見直しによる上昇幅(約6千円)の半分に留めたと説明されています。あわせて、区分が下がる事業所の基本報酬の減少が3%程度に収まるよう、中間の区分が新設されました。区分七と八の間の基準(1万円)は据え置きです。
中間区分の位置は、定員の規模によって異なります。次の表は、サービス費(Ⅰ)・定員20人以下の場合の例です。
| 区分 | 平均工賃月額(令和8年6月から) |
|---|---|
| (一) | 4万8千円以上 |
| (A) | 4万5千円以上4万8千円未満 |
| (二) | 3万8千円以上4万5千円未満 |
| (B) | 3万5千円以上3万8千円未満 |
| (三) | 3万3千円以上3万5千円未満 |
| (C・四) | 2万8千円以上3万3千円未満 |
| (D・五) | 2万3千円以上2万8千円未満 |
| (E) | 2万円以上2万3千円未満 |
| (六) | 1万8千円以上2万円未満 |
| (F) | 1万5千円以上1万8千円未満 |
| (七) | 1万円以上1万5千円未満 |
| (八) | 1万円未満 |
見直し前は、4万5千円、3万5千円、3万円、2万5千円、2万円、1万5千円、1万円が境目でした。架空例の16,500円は、見直し前は「1万5千円以上2万円未満」の区分でしたが、見直し後は新設の「1万5千円以上1万8千円未満」の区分に入ります。この区分に入る金額は、定員21人以上の場合の表でも同じです。単位数と、定員ごとの区分の位置は、厚生労働省の資料で確かめます。
見直しの対象外になる事業所もあります
すべての事業所が新しい基準で判定されるわけではありません。令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は、見直しの適用対象外とされ、従前の報酬区分が適用されます。令和5年4月以前に指定を受けた事業所は、令和6年3月と令和6年4月の区分を比べます。令和5年5月から令和6年3月までに指定を受けた事業所は、指定の時期と経過措置の期間によって比べる月が異なり、厚生労働省の別添資料に図で示されています。
比べた月の区分と、届け出た書類の控えを並べておけば、今の区分がどちらの判定で決まったのかを説明できます。令和9年度の報酬改定で扱いが見直される可能性もあるため、毎年度、最新の資料で確かめます。
区分の数字と、工賃を上げる取り組みは分けて考えます
平均工賃月額は報酬に直結するので、区分の境目が気になるのは自然なことです。ただ、決められた式と記録で正しく出すことと、工賃そのものを上げることは、別の仕事です。
工賃を上げる側は、作業の単価、売り先、値付け、作業の分け方といった、仕事の環境をどう変えるかの話になります。利用者の方にもっと作業をと求める前に、環境の側で変えられることを探すほうが、本人に負担を寄せずに済みます。都道府県の工賃向上計画に沿って事業所も計画を作り、掲げた目標を達成した場合の目標工賃達成加算もあります。要件と確認の方法は、令和6年度報酬改定のQ&Aで示されています。
AIは検算と突き合わせに使い、区分の判断は人が持ちます
AIに任せやすいのは、月別の延べ利用者数と実績記録票の合計の照合、開所日の一覧と実績の日付の突き合わせ、計算式の検算です。表計算の関数でも同じことができます。毎月の確認にかかる時間を先に測っておくと、どこから手を付けるかを決めやすくなります。測り方は支援記録にかかる時間の測り方で紹介しています。
一方で、どの支払を前年度の総額に含めるか、どの区分に当たるか、見直しの対象外に当たるかは、根拠資料と指定権者の案内をもとに人が決めます。検算に利用者の氏名や個人別の工賃は必要なく、月別の合計値だけで足ります。外部のAIを使う前の線引きは、福祉現場でAIを使うときの個人情報とリスクにまとめています。
計算の控えは、次の人が同じ数字を出せる形で残します
計算に使った3つの数字、元の記録の保存先、計算した日と担当者、確認した人。この4つを1枚に残しておけば、担当が替わっても、次の年度も、同じ手順で出せます。記録全体の揃え方は、運営指導で見られる記録を、日常の中で揃えておく方法で整理しています。
工賃台帳と実績記録の突き合わせなど、毎月くり返す確認作業を、書類1種類から整えたい方へ。 AI業務効率化支援では、今ある様式と手順を見ながら、AIに任せる工程と人が確かめる工程を一緒に分けていきます。
よくある質問
- 平均工賃月額の計算式は何ですか?
- 令和6年度の報酬改定以降は、前年度の工賃支払総額を、開所日1日あたりの平均利用者数(前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数)で割り、さらに12で割って求めます。端数などの細かな取扱いは、留意事項通知と指定権者の案内で確認します。
- 月の途中で利用を始めた人は、計算から除外しますか?
- 令和6年度の見直しで、月途中の利用開始・終了や入院などを除外する従来の要件は廃止されました。新しい式では、延べ利用者数と年間開所日数から平均利用者数を出します。
- 令和8年6月から何が変わりましたか?
- 平均工賃月額に応じた基本報酬区分の基準額が3千円引き上げられ、区分が下がる事業所の基本報酬の減少が3%程度に収まるよう中間の区分が新設されました。区分七と八の間(1万円)は据え置きで、令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は見直しの対象外です。
- AIで平均工賃月額を計算してもよいですか?
- 月別の合計値を使った検算や、実績記録との突き合わせには使えます。どの支払を含めるか、どの区分や対象外に当たるかの判断は、根拠資料と指定権者の案内をもとに人が行います。利用者の氏名や個人別の工賃を渡す必要はありません。
参照した一次情報
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日)https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001205322.pdf
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(令和8年2月18日)https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf
- 厚生労働省「就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直しについて」(別添資料)https://www.mhlw.go.jp/content/001683311.pdf
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和6年3月29日)問58 https://www.mhlw.go.jp/content/001260473.pdf
この記事は2026年9月27日時点で確認した厚生労働省の公開資料にもとづく一般的な整理です。算定の細かな取扱い、区分の判定、見直しの対象外に当たるかどうかは、事業所の指定時期や定員、個別の事情によって異なります。最新の告示・留意事項通知と、所管の指定権者の案内で確認が必要です。