Column / 福祉事業所の開設
放課後等デイサービス・児童発達支援の総量規制
開設できる自治体か、候補地を決める前に確かめる手順
候補物件の内見を終え、家賃と送迎動線まで見たあとで、その市では今年度の新規申請を受け付けていないと分かる。放課後等デイサービスや児童発達支援の開設で、確認の順番が逆になると起きることです。物件探しにかけた時間も、開設に向けて動き出した気持ちも、そこでいったん止まってしまいます。調べ方が足りなかったとは限りません。総量規制には国の一覧がなく、告知の場所も名称も自治体ごとに違うため、見つけにくい情報なんです。
この記事では、児童福祉法にもとづく障害児通所支援(放課後等デイサービス・児童発達支援)の総量規制について、条文、告知される場所、自治体の公開例、候補地を決める前に確かめる5つの手順を整理します。指定申請の書類作成や事業計画の作り方は扱いません。
Quick answer
総量規制は「自治体ごと・年度ごと・サービス種別ごと」に決まります。候補地より先に、指定権者の告知を確かめます。
- 根拠は児童福祉法第21条の5の15第5項。都道府県障害児福祉計画で定める必要な量に達している区域では、都道府県(政令市・中核市を含む指定権者)が指定をしないことができます。
- 告知は指定権者のサイトの「総量規制」「新規指定の受付停止」ページに出ます。市町村の障害児福祉計画の見込量と実績が判断材料です。
- 確認は、指定権者の特定 → 告知ページ → 計画の見込量と実績 → 市町村への事前相談・意見書 → 受付停止の期間、の順で行います。
- 規制のある自治体でも、対象児の特化(強度行動障害・医療的ケア・重症心身障害など)を例外とする例があります。窓口で確認します。
総量規制とは何か。条文で確かめます
障害児通所支援の指定は、児童福祉法第21条の5の15にもとづいて都道府県知事(政令指定都市・中核市はその市長)が行います。同条第5項は、申請に係る事業所の所在地を含む区域で、都道府県障害児福祉計画に定める必要な量に既に達しているか、申請によって超えることになると認めるときなどに、指定をしないことができると定めています。
これが「総量規制」と呼ばれる仕組みです。法律が新規開設を禁じているのではなく、計画の必要量を根拠に、指定権者が指定を行わない判断をできる、という構造です。成人向けの生活介護や就労継続支援B型には、障害者総合支援法第36条第5項に同じ趣旨の規定があり、自治体によっては児童と成人のサービスをまとめて告知しています。
条文を読むときに見る点は3つです。判断の主体は指定権者であること。基準は都道府県障害児福祉計画(実務では市町村の障害児福祉計画の見込量が使われる)であること。対象はサービス種別ごとであることです。放課後等デイサービスに規制がかかっていても、児童発達支援は受け付けている、という組み合わせがあり得ます。
告知は指定権者ごとのサイトにあって、探しにくいですよね
総量規制の有無は、国が一覧を公表しているわけではありません。都道府県、政令指定都市、中核市それぞれの障害福祉の担当課が、自分の管内について告知します。ページの名称は「総量規制の実施について」「新規指定申請の受付停止について」「指定に関する事前協議」などで揃っていません。
検索するときは、指定権者名と「総量規制」、または「放課後等デイサービス 新規指定 受付」を組み合わせます。市のページに出ていなくても、県の指定担当ページに出ていることがあります。逆に、県は規制していないが、市が事前協議で意見書を出さない運用をしていることもあります。指定権者と事前相談先(市町村)は分けて確認します。
自治体の公開例。一宮市と函館市
愛知県一宮市は、2026年度について、生活介護、就労継続支援B型、児童発達支援、放課後等デイサービスの4サービスで新規申請と定員増加に関する相談の受付停止を継続すると公開しています。根拠として障害者総合支援法第36条第5項・同施行規則第34条の20と、児童福祉法第21条の5の15第5項・同施行規則第18条の30の2を挙げ、第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画の2026年度の見込量をサービス量が超えていることを判断基準にしています。例外として、強度行動障害・医療的ケア・重症心身障害の対象者である場合などは規制対象外となる可能性があると示されています。
北海道函館市は、児童発達支援・放課後等デイサービスを総量規制の対象サービスとし、利用率が100%を超えたときに規制を実施する運用を公開しています。期間を区切って判断しており、2025年12月から2026年2月は規制なし、2026年3月から5月は地域の福祉計画に関する協議会の決定を待つ、という形です。
この2つの例から分かるのは、同じ制度でも、判断の単位(年度全体か、数か月ごとか)、判断の基準(計画の見込量か、利用率か)、例外の有無が自治体で違うことです。他の自治体の運用をそのまま当てはめず、候補地の指定権者のページを読みます。
候補地を決める前に確かめる、5つの手順
| 順番 | 確かめること | 見る資料・聞く先 |
|---|---|---|
| 1 | 候補地の指定権者はどこか | 都道府県か、政令指定都市・中核市か。市のサイトの「障害福祉サービス事業者の指定」ページ |
| 2 | 総量規制の告知が出ているか | 指定権者の「総量規制」「新規指定申請の受付停止」ページ。更新日と対象年度 |
| 3 | 計画の見込量と実績はどうか | 市町村の障害児福祉計画(第3期は2024〜2026年度)の見込量と、公開されている実績・利用率 |
| 4 | 市町村の事前相談と意見書 | 指定申請の前に市町村へ相談し、意見書の交付を受ける運用があるか。相談の予約方法と所要期間 |
| 5 | 受付停止の期間と見直し時期 | 年度全体か、数か月ごとか。次の判断の時期(協議会の開催、次期計画の策定) |
1から3までは公開資料で確かめられます。4と5は窓口に聞かないと分からないことが多く、電話1本で済まないケースもあります。指定権者の見解を確認した日、担当課、聞いた内容、次に提出を求められた資料を記録に残します。開設の準備が長期に及ぶほど、誰がいつ何を確認したかが後で効いてきます。
規制がある場合、候補地の選び方はどう変わるか
放課後等デイサービスの送迎は、区や市の境をまたぎます。候補地の指定権者に規制があっても、送迎15分圏の中に規制のない隣接自治体が含まれていれば、候補地をそちら側へ動かす選択があります。ただし、児童が通う学校や自宅がある市町村の受給者証で利用するため、需要の中心がどこにあるかは別に見ます。
もう一つは、対象児の特化です。一宮市の例のように、強度行動障害や医療的ケア、重症心身障害の児童を対象とする事業所を例外とする自治体があります。この場合は、人員配置(看護職員など)と設備の条件が通常より重くなるため、物件の条件と採用の見込みを先に確かめます。
候補地の一次比較(競合密度・学校分布・送迎圏・ハザード・地価)は、規制の確認が終わってから行うのが順番です。YORIAIの開設判断レポートでは、着手前に候補地の指定権者について総量規制の告知の有無を確認し、確認先と確認日をレポートに記載します。窓口での最終確認はご依頼者側で行っていただく前提です。
2026年度の新規指定に関わる、もう一つの確認
総量規制とは別に、令和8年度の障害福祉サービス等報酬改定(臨時の見直し)では、2026年6月以降に新規指定を受ける放課後等デイサービスの基本報酬に、既存事業所と異なる扱いが設けられました。単価の数値は告示と指定権者の案内で確認が必要です。開設の収支計画を立てるときは、総量規制の有無と、新規指定の報酬の扱いを分けて確認します。
AIに任せる工程と、人が確かめる工程
指定権者のサイトから総量規制の告知ページを探す、複数の自治体の告知文を同じ表にまとめる、障害児福祉計画のPDFから見込量の表を抜き出す。こうした収集と整理はAIに任せられます。
一方で、告知の解釈(自分の候補地が対象区域か、例外に当たるか)と、窓口への事前相談は人が行います。AIがまとめた表には、出典URLと取得日を付け、窓口で確認した内容で上書きします。公開資料の更新日が古い場合は、それだけで判断せず、電話で現在の運用を聞きます。
候補地の指定権者について、総量規制の告知の有無を先に確かめてから、候補地を比較したい方へ。 開設判断レポート(税込39,800円〜)では、着手前の一次確認と、競合・需要・送迎・ハザード・地価の比較を、候補地1件からお引き受けします。
よくある質問
- 総量規制は全国一律ですか?
- 一律ではありません。児童福祉法第21条の5の15第5項にもとづき、指定権者(都道府県・政令指定都市・中核市)が、区域ごと・サービス種別ごと・年度や期間ごとに判断します。国が一覧を公表しているわけではないため、候補地の指定権者のサイトで確かめます。
- 放課後等デイサービスと児童発達支援は、同時に規制されますか?
- 別々に判断されます。一宮市のように両方を対象にしている例もあれば、片方だけの例もあります。多機能型で両方を提供する場合は、両方の扱いを確認します。
- 規制がある自治体では、開設をあきらめるしかありませんか?
- 例外を設けている自治体があります。一宮市は強度行動障害・医療的ケア・重症心身障害の対象者である場合などを規制対象外となる可能性があると示しています。また、送迎圏に規制のない隣接自治体が含まれる場合は、候補地を動かす選択もあります。いずれも窓口で確認します。
- 事前相談や意見書は、どの自治体でも必要ですか?
- 運用は自治体で異なります。指定申請の前に市町村への事前相談と意見書の交付を求める運用が広がっていますが、必要の有無、予約方法、所要期間は指定権者と市町村のページで確認します。
参照した一次情報
- 児童福祉法 第21条の5の15(e-Gov法令検索。第5項に、都道府県障害児福祉計画の必要な量に達している場合等に指定をしないことができる旨の規定)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 第36条第5項(生活介護・就労継続支援B型等の同趣旨の規定)
- 一宮市「総量規制の実施について」(2026年7月24日更新。対象4サービス、根拠条文、判断基準、例外の記載)
- 函館市「特定障害福祉サービス、特定障害児通所支援の指定手続き(総量規制)について」(対象サービス、利用率100%超で実施、期間ごとの判断)
- こども家庭庁「放課後等デイサービスガイドライン」(令和6年7月)
- かべなしクラウド「就労継続支援B型はどう変わる?令和8年度障害福祉サービス等報酬改定(臨時応急的な見直し)」(新規指定事業所の基本報酬の扱いに関する解説)
この記事は2026年9月18日時点で確認した法令と自治体の公開資料にもとづく整理です。総量規制の有無・対象サービス・例外・期間は指定権者と年度で異なり、公開資料が更新されていない場合もあります。開設の判断は、候補地の指定権者と市町村の窓口で最新の運用を確認したうえで行ってください。